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突発ディノヒバ♀SS 。

25巻の例のネタです。



「ヤダっ」
そう一言発すると恭弥は2メートルは在るであろうここまで屋上の地を蹴り飛び上がってきた。
恭弥の背中が太陽を隠し、逆光でその表情は分からない。
けれど、一度ひきかけた腰を据えて、斜め上前方から降り下ろされるトンファを鞭で絡めとりぐっと引き寄せる。
「――っ」
重力と俺の鞭が加えた力で、恭弥の細い身体は難なく俺の胸に落ちてきた。
ぼふ、と音を立てて飛込んできた上体を素早く抱き留めて引き上げる。
俺の開いた足の間に恭弥の細い腰が収まって、逃がさぬように俺は恭弥の背をかき抱いた。
抵抗するようにみじろぐ身体を封じ込め、短く切り揃えられた髪から除く首筋に鼻先を埋めると、まるで脅えるように恭弥の背が震えた。
「変わんねぇ……恭弥の匂いだ」
ほとんど無意識に呟くと、俺の背中の方でカラン、とトンファが地に落ちる音がした。
首筋の動脈を鼻先で探って、見つけたそこに唇を押し当てるとはっきり脅えていると判るように恭弥の背がこわばった。
「ん、なんもしねぇよ」
恭弥が誤って落ちてしまわないように加減して腕を緩める。
俺の胸に一緒に抱き込まれていた片側のトンファを見下ろして、いや、たぶん単に俺から目を反らして、恭弥は、
「アナタは僕の、なに?」
10年前のこの頃の俺達はもう付き合ってるはずて、キスも、その先も終えているはずだ。
なら、なぜそんなことを問うのか。
だから満面の笑みで教えてやる。
「10年後の恭弥は俺の恋人じゃなくて――妻、だぜ」
でも10年前のお前にとっては家庭教師な、と付け加えると恭弥の方から抱きついてきた。
もうひとつのトンファも地へ転がる。
「良かった……」
まるで吐息を吐き出すように恭弥が呟く。
「ん? 10年前の俺ってそんなに信用ねぇ?」
恭弥には何時だって誠実に接してきたつもりだ。
初めて愛した人だし、絶対に離したくないとずっと思っていた。そして今も思ってる。
「だって、アナタは優しくても、アナタを取り囲む世界は僕には優しくない」
幼い顔が俺の胸を離れて、俺の顔に近づく。
じっと俺の目をのぞき込んで、まるで、俺の嘘を見破ろうとするように。
でも俺は嘘なんて一つも吐いていないから、その目に向かって笑みを浮かべた。
「大丈夫。この胸がたっぷり膨らむ頃にはおまえにも優しくなってるぜ」
制服の上から触れると、まだ小さな胸が震えた。
恭弥は頬を染めたまま何も言わない。
「でも、俺が恭弥にするキスはこっちな」
ちゅっと音を立てて頬に口付けると、
「あたりまえ……じゃない」
恭弥はそう、小さく呟いた。
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